カシの木の家の絵師
更新日:2010年8月20日
国井忠吉が描いた涅槃図
寒河江むかしさがし
市史編纂委員 宇井 啓
八鍬の中央、高いカシの木のある国井弥右衛門家。天正16年(1588年)の土地売券を残す古い家。
江戸時代、幕府領八鍬村の有力者で組頭。明治6年には八鍬村戸長となる。このころ、六町八反歩を所有した豊かな農民であった。
この家に残る、在家には珍しい一幅の涅槃図。この巻止めから、明治21年に描かれたことが分かる。
小品ながら、釈迦の死とそれをなげき悲しむ群衆がみごとに表現されている。
この絵は、どのような経歴の絵師が描いたのか。当主によると、この絵師は国井弥右衛門家に生まれた「忠吉」という人で、仏画を専門に描き24歳いう若さで没したという。
その戒名は、「本繪夢性居士」。明治22年5月28日没とある。性来、絵が好きだったらしく、この涅槃図は、なくなる前年に描いたものであった。
師匠は分からないが、親戚に柴橋村の佐藤市兵衛がいた。柴橋寺涅槃図を描いた人である。
短い一生のうちに、「地獄極楽図」の三面を描く。八鍬長泉寺図を見ると、中央に閻魔大王と亡者の裁判。右に三途の川と奪衣婆。左に熱湯の釜の叫喚地獄。上方に美しい地蔵と平和な極楽浄土を鮮やかに描く。
忠吉の絵は、閻魔大王も鬼もみんなやさしく明るい。
残る二図は華蔵院地蔵堂、水沼龍沼寺のもの。忠吉の没後に、家族がその薄幸を哀れんで奉納したらしい。
忠吉の絵を見た日。カシの木は枝を鳴らし、ぽっかりあいた雪の中の池に、鮮やかな金魚が泳いでいた。
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